親心というのは不思議なものだ。

朝「もう帰ってくるなクソガキ！！」と心の中で叫びながら学校に送りだしても、一時間後には「やっぱり元気に帰ってきて欲しいな」と思うものだし、日々そんな事の繰り返しだ。



私自身、子供の頃、母から私に対する拒絶を感じたことは何度もある。

あぁ、今母さんは私のこと「この子嫌い！！」って思っているな、ということを。

その時はチクッと胸が痛むのだけれど、そこまで深い傷にならずに済んだのは、

その拒絶がずっと続いているものではなくて一時的にわきあがっているだけのものだな、ということを、本能的に感じ取っていたからだと思う。



自分の両親の親として足らなかったところは、単純に両親の能力不足や性格上の問題から生じたもので、

決して、私に対して愛情が無かったからとか、私を不幸にしてやろうと思ってそうしていたわけではない、ということだけははっきりと感じていたから。

彼らなりに精一杯、私と兄をちゃんとした大人に育てようと必死だったことだけはわかる。

だから、両親に対して複雑な感情はずっとぬぐい去れないけれど、

成人するまで死なさずに育ててくれたこと、教育を受けさせてくれたことに関しては感謝しているし、

なんやかんやで私は父と母が好きだ。




自分が親になってみて、子供を育てることがどんなに大変なことか身にしみてわかった。

一日三食食べさせて、風呂に入れて、教育を受けさせて、そういう当たり前のことにどれだけの労力とどれだけの苦労がともなうことか。

子供はかわいいだけのお人形じゃない。自分とは全く別の人格を持った、生身の人間だ。

子供を育てられることはとても幸せなことだが、けして楽しい事ばかりじゃない。

それに親だって人間だ。

子供との相性もあれば、逃げ出したくなることだってある。

子供のためにはこうすべきだと、わかっていても出来ないことがある。



それでも「だから、しょうがないじゃない」と開き直りたくはない。

子供に悲しい思いはさせたくないし、親の都合や一時の気迷いで子供を傷つけるような真似はしたくない。

出来る限り良い環境で育ててあげたい。

心身ともに健康なまま大人にしてあげたい。

良い時も、悪い時も、何もかも受け入れてあげたい。

強くそう思っていても、どうしても、子供のことが愛せない瞬間がある。

生理的に無理だとすら感じてしまうことだってある。



そういう感情を子供に悟られてはいけない、とグッと押し殺したつもりでも、ついついポロリと傷つけるような言葉を吐いてしまう。

そんなのは１００％私の親としての弱さだし、子供にはなんの罪も無い。



それでも、言ってしまった言葉は取り消せない。

だからせめて、自分の心が落ち着いてまた子供に対する愛情が戻ってきてから、ちゃんとやり直す。

「さっきは『出ていけ！』とか言ってごめん。つい腹立ってあんなこと言っちゃったけど、本気じゃないからね」

と謝る。

そうすると一瞬で安心した顔に戻ってくれる。

その後はニコニコ普段どうりに笑って過ごして、何事も無かったかのようにぐっすり眠る。





当然、謝れば済むってわけじゃない。

子供を傷つけるような言動は、最初からしない方がいいに決まっている。

それだけは譲れないし、「親も人間だから」と開き直っているばかりじゃいけない。

どんな理由があろうとも、子供に対しての暴力や暴言は絶対にダメ。

少しずつでも、変わりたい。我慢できるようになりたい。

そう思って努力しても、どうしても無理な時がある。

わざと私を怒らせようと挑発しているのかな？と感じることすらある。

ただでさえ、人一倍育てにくい子。

理想どうりにはいかない。

ボディーブローのように蓄積するダメージ。ストレス。

親としての自身喪失。

そういうのが積もり積もって、爆発してしまう時がある。

「そんなに嫌なら、よその家の子になればいいでしょ！！」

「こんなんだと、もう一緒に暮らせないよ！！」

そういう、存在を否定するような言葉を吐いてしまう。

育児書に書いてある「子供に言ってはいけない言葉」の定番を、今までひととおり言ってしまった気がする。



そんな時は、後からやり直すしかない。

少しでも子供の傷を浅くするためには、親の側の弱さや未熟さを認めて、素直に謝る。

そして、普段から「あなたは宝物」「生まれてきてくれてありがとう」と伝え続ける。

たくさんハグしたり、スキンシップをとる。

それで許されるわけではないが、少しは、マシだと思うから。



子供同士のケンカだって、同じようなことがある。

いつも大の仲良しだった二人がささいな事で言い争いになって、一時の感情で

「○○ちゃんなんて大っきらい！！」

「もう一生遊ばないからね！！」

とか言ってしまう。

ケンカの最中は本当に心の底から「大っきらい！！」と思っていたとしても、

仲直りした後は「何であんなこと言っちゃったんだろう？」と不思議なくらいにまた相手の事が好きになっている。



親は子供より大人なのだから、一時の感情で暴言なんて吐かない方がいいに決まっている。

けれど、親子ゲンカも、子供同士のケンカも、大して変わらないなと思うことがある。

私がまだまだ子供だからかも知れないけれど。



完璧な親にはなれないけれど、少しでもマシになるように、努力を続けていきます。



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